ドリーム小説 夢 八戒 最遊記 誕生日




 八戒に海へ連れて行って貰ったから、また連れて行ってねっていう意味も込めて。私が一目惚れをしたのだけど、八戒に似合うんじゃないかと思えて。





イルカの首飾り






 日頃お世話になっている八戒の誕生日プレゼントゲットの為、実は、三蔵に頼んで寺院事務関係のアルバイトをした。と、いっても一日だけ。
 あたしは結構、真面目に働いてみたりする。貯金って素敵。普段はあんましおおっぴらには言えない事をしているから、こーゆー時は、ほんと、いつになく超真面目にひたすら無言で仕事をこなすのだ。多分いつもの反動と、素行不良っぷりが出ないように。
 三蔵に激怒られない為、もとい、余計な心配を掛けない為、マトモな職務選択。そう、あたしが普段どういう方法で稼いでいるかは、三蔵にバレたら困るので口外しないで欲しい。つか、あたしが言わなきゃいいんだ。じゃ、内緒。
 悟浄はどーせ寝ているかまだ帰ってきてすらいないかなので、八戒にプレゼントを渡すのは昼前が狙い目だ。
 皆でお祝いもするが、気分の問題で先に渡してしまいたい。からかわれることはないと思うが、何だか照れ臭いのだもの。あと、意味不明な三蔵の高圧プレッシャを受けたくない。
 次は悟浄の誕生日があって、同じ月に三蔵も祝う。三蔵か。去年の事を考えると、ひたすら面倒臭くなるな。否、三蔵は好きなんだ。言い訳くさく付け足し。
 ま、二人分のプレゼント代金は纏めて稼ごう。
 先の事より目先の八戒だ。八戒が家に居る事は判っているので、街外れの森へと続く道を迷わずに進む。
 気を探ると、悟浄も居る…。何だ居るのか起きてるのか。勿論、あの家は悟浄のものなんだから不思議はないのだ。ただ、ええい、何でこんな時に! とは思うよ許してよ。
 ああ、今日だからこそ、なのか?
 スピードを落とした両の足を見詰めつつ、どうしたもんかと思案に暮れる。
 いやいや、そんなに不都合はないはずなんですが。
 何より、一対一に拘るあたしがおかしいんか?
 答えが出ないまま、悟浄と八戒の家に辿り着いた。あ、八戒だ。洗濯物を干している最中。ってコトはお一人?! イエス、一人!
 足音を聞き付けてか、八戒が白いシーツを両手で広げたまま振り向く。
 「あれ、 ? どうしたんですか」
 八戒は驚きつつ振り向いたが、あたしを視認して、遅れてにっこり微笑んだ。
 どうしたんですか、って声が超お優しい。えへ。
 「お誕生日オメデトウゴザイマス、と、良いのがあったのでプレゼントを持って参りました」
 まだここは無表情だったり。
 「一人で来たんですか? フライング狙い?」
 「そーそー。てか、ンマー、後でだっていいっちゃいいんですが。むにゃ」
 言葉が続かなくて、口を歪めてみたりする。
 「嬉しいです。プレゼント開けても良いですか?」
 「どうぞ」
 八戒に手渡したプレゼントさんは、どんどん外装を取り除かれていく。緑のリボンを解き、白い包装紙を丁寧に剥がし、八戒の手はそこで止まった。
 透明なプラスティックケースの下には、イルカの首飾りがお目見えだ。
 黒い革紐に銀色のイルカ。イルカは、そのお腹の下に球体を抱えている。
 角度によって、マリンブルーとエメラルドグリーンを楽しめるという石だ。色の境目のグラデーションが見事で、あたしはこのアクセサリに一目惚れをしたのだ。
 自分のものにすれば良いのに、あたしの頭に浮かんだのは自分じゃなかった。想像の中の登場人物は、猪八戒氏だったのだ。
 そうなると、幾ら自分の映像と入れ替えようにも上手くいかず、そうかそうか、あたしはそんなにこれを身に付けた八戒が見たいのか、と納得してみた。
 「八戒、お願い! 今付けてみて? すっごい見たいの」
 ぱんっと両手を合わせてお願いする。
 八戒はクスリと小さく笑い、頷いた。蓋を開けて、首飾りを取り出す。
 あたしは、邪魔なケースや包装類を預かろうと手を差し出すが、八戒にやんわり押し留められた。
 「 に付けて貰いたいです」
 「う? …おし!」
 八戒は大きいので、つか、あたしはあたしで背低いから、彼は屈むし、こっちは背伸び。受け取った首飾りを付けてあげる。八戒の後ろから、どんな塩梅か覗き見した。
 いいんじゃない?
 八戒の前に回り込み、しげしげと見る。
 「うん、いいよいい! 似合う似合う! よーかったぁ〜」
 思った通りで大満足。おもいっきし笑顔。大歓喜!
 「…ありがとうございます。嬉しいです、凄く」
 「そう? ウフフフ」
 あたしも嬉しいぞ。
 「イルカを見たいって云ってたもんね。あと、前に海へ連れってくれたから…とか、また行きたいなーと思ったとか、それ付けた八戒が見たかったとか」
 「ああ、言いましたね。正確には、イルカが作るシルバーリング…バブルリングを見たいって事なんですけど」
 「何、それ?」
 「 は流体力学に興味ありますか?」
 「…………ごめん、何か、今、耳鳴りがして良く聞こえなかったんですけど?」
 「あはははは。直接見た方が判り易いんですけどね、イルカを間近に見られる機会がないですからねえ…」
 困り笑顔の八戒に、あたしも困り笑顔で返す。
 水族館でイルカショーを観る、なんて事、出来ないからね。残念だ。
 「ねえ、洗濯物干すの手伝うよ」
 まだ籠に残っている洗濯物を見る。さっき八戒が干しかけていたシーツに手を伸ばした。
 「いいですよ、 は家の中で待っていて下さい。すぐに終わりますから」
 「うーん、小物干したい」
 「じゃ、タオルをお願いしますね」
 「オッケイ」
 鼻歌とか歌いたいシチュエーションだ。
 バスタオルを広げると、洗剤の鈴蘭のかほりが鼻をくすぐる。良い感じ。
 秋に入ったはずなのに、まだ太陽の陽射しは強い。紫外線もバリバリって気がする。
 たわいのない話をしながら、全部干し終えた時、八戒がにっこり微笑んで提案してきた。
 「 の来年の誕生日には、シルバーリングを贈りたいなあ。僕が一番の予約者って事で、覚えていて下さいね?」
 「う? うー、気持ちは嬉しいけど、あたし駄目。こまっこいアクセはなくすから怖いよう」
 「ずっと付けていれば良いんですよ。余り外さないと思いますし」
 外さないと思いますし???
 「コレみたく?」
 自分の額に嵌まっている金の輪を指差した。悟空とお揃いの妖力制御装置。
 「 は、指輪のジンクス知りませんか?」
 「知らないよ」
 「では、八ヶ月後に教えてあげます」
 最高ににこやかな笑顔で、有無を言わさぬ魔力が放たれた。えぇー、クリティカルヒット。
 楽しみですねえ、なんて言い残して八戒は先を歩く。
 いや、一人で楽しまないで下さい。お願いだから。
 「カフェオレ飲みましょうか」
 扉の前で八戒が云った。あたしは飲む! と声も身体も弾ませた。














**シルバーリングは18ちゃいでいいのか? 十九? 十九歳に貰うと幸せ説、十八歳に貰うと愛・永遠(幸せになれるってことですが)説とかあったり。
 昔、シルバーリングを贈るって話を漫画で読んだんですが、主人公は十九歳だった気がする…。
 十六、十七歳にも貰うと宜しい指輪が存在するようですよ。まじないの域を出ないとしても。

 八戒さんです。遅れましたがハッピーバースディ!
 昨日眠りにつく前に考えていたのとは、後半大分違っています。千文字くらいまではヒロイン年齢十五、六のつもりだったし。八戒がね、もっとね、白い性格前面に出しつつ、 さんからも一つプレゼント欲しいとか強請る予定だったのですが。私はデコチュウが好きです。(←聞いてません)
 しかし、あっさり指輪を贈る予約だけで終わりました。そっちのがアレか。要はジンクスにかこつけて、エンゲージ?
 そこまで考えていなかった。八戒凄い…。侮れません。恐ろしい人!(←もう寝ろ)
 ところで結婚指輪って、寝てる時もお風呂の時も外さないものなのかな? 人に聞くのも面倒臭い時間帯…。

*2005/09/22up





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