秋晴れの空。その証拠に。 「うろこ雲だ〜」 「いわし雲」 「へ?」 ナルトは を見る。いわしのみりん焼きでも思い浮かべているいるような顔だった。 「い、いわし?」 うろこ雲、としか覚えていなかったナルトなので、思わずまじまじ空を見つめる。 「いわし?」 クスリ、と笑った後、 は改めて超ご機嫌な笑みを浮かべる。 「うろこ雲正解。でも、いわし雲ともいうわ。巻積雲が正式かな? よし、今日の晩ご飯はいわしみりんに決定した」 「あ、オレもそれ好き〜。でもさ、でもさ、その前にそろそろいいんじゃない?」 パチパチはぜるのは、火と枯れ葉。 「晩ご飯の前に、おやつの焼き芋〜〜!!」 の住み込む大屋敷の庭で、枯れ葉集めというお手伝いのついでに芋焼きを楽しんでいる。芋は二人の持ち込みではなく、親戚の猿飛がくれたものだった。 火箸と火鋏を美味く使い分け、ナルトが芋を取り出していく。 「まず一つ目。おっ、焼けてる! 上手い具合に焼けてるってばよー!」 ナルトの鼻孔をくすぐる甘い匂い。そして、わんさかと出ている、湯気。 「おう! キレイな黄金色だぁねえ」 ナルトの手元を覗き込み、 も甘い香りに浸る。 「火影のじいちゃんと、木の葉丸と、あとイルカ先生の分はどけとこ。はい、 ねーちゃんの分」 「ありがとー!」 ナルトは丁寧にも新聞紙に巻いて寄越した。ぱっくり割ってみると、もっふぁーっとした蒸気が顔に当たる。 「あっつ〜」 「ねーちゃん大丈夫?」 「うん、大丈夫。いい焼けっぷりだねー。うれしー!」 「へっへーん! オレってば、前に何度もやったことあるからな。自信あり! も少ししたらばっくり食べちゃって!」 は猫舌なので、今のままではとてもではないが食べられない。ナルトは早くも、ほふほふと口に含んでいる。 「うっめー!!! さすがオレ」 倖せの絶頂、という声だ。 「ナルトー、今度の運動会、お弁当持って行くからねー。頑張りなよ?」 ふいに が話を振った。 「んん! わーかってるって! 弁当にはタコウィンナーは必須だかんね!」 「フフン。それこそ判っているわ。あたりきよ! タコさんウィンナーは砂糖入りの卵焼きとセットで私の中では定番だわ」 「ちゃんと赤いウィンナーにしてよ?! あれじゃないと、いっくらタコの形しててもタコと認めねー!」 「ワガママねー。でも、うん、私も同じ意見だったり。……あれ? 修学旅行ってさ、お昼お弁当いるっけ?」 「…わかんね…。京都で喰うんじゃねーかなー?」 実のところ、まだ詳しい事は知らされていないのだ。来週辺りに修学旅行のしおりが配られてやっと判る。 「サクラちゃんは実行委員だから、少しは知ってるかも。でもまだ一ヶ月もあるんだぜ? 気が早いって!」 「ぅうん。そね。っと、そろそろイイかなー?」 多少は冷めた頃合いか、と思いつつもふうふう息を吹きかける。恐々と少しかじりつきー…。 「どお? どお?」 ナルトの期待の眼差しを受けて、 は微笑んだ。 「ちょーサイコー! うんまーい! あんまーい!」 二口目は大口で食べる。ほっくりした温かさと、しっとりした口当たり。かむほどに広がる芋の甘さに は目を閉じた。 「へへ。 ねーちゃんってば、美味そーに食べてくれんな! またオレが焼いてやるってばよ!」 「良いね。ありがと!」 「ねーちゃん、ハッピー?」 質問に一瞬驚きはしたが、 は自分の頬をナルトの頬へくっつけて、むにっとした感触を楽しむ。 「ハッピー! 名づけて、やきいもハッピーインサンデー!」 ナルトのおかげだよ、とつけ加えれば。 可愛い弟分から、溢れんばかりの笑みがこぼれた。 うろこ雲も通り去り、天高くナルトのような太陽が輝く、ある秋の日曜日のこと…。 *'05/10/16up Kodo of Kanoto Insho Wrote . |
||