魔法のチョコブラウニー




が「毎年バレンタインには自分のためにチョコブラウニーを作っている」と言ってしまってからというもの、毎年紂王にチョコブラウニーを強請られることになっている。
自分のため、を強調したが、紂王はお構いなしだ。
の手作りが食べられるなら、何でもいい。…予のために、と少しでも想ってくれたら尚良い」
と、にっこり微笑まれて、は口の端を軽く歪めた。
「私のためだっつーの」
「バレンタインには何もなしか?」
「…いや、お取り寄せの…」
「それも嬉しいが、手作りがいい」
「変に拘るわねえ」
「手作りだと、相手のことを想った分、魔法がかかったような美味しさになるだろう?」
「は?」
が間抜けな声を出すが、紂王はお構いなしにに抱きつく。
「会社だ。自重しろ」
「誰も見ていない」
と紂王以外誰もいない社長室ではあるが、彼女は気が気でない。
「それと、相手のことを想うっつーか自分の…」
「判ってる。でも、今年は、少しだけ、予のことを考えながら、作ってみてくれ」
「…それでも味は変わんないと思うけど」
「ああ、変わらず、美味しいだろうな」
紂王の優しい声に騙されたつもりで、は言う。
「判ったわよ。今年のチョコブラウニーは、私と、ちょこっと紂のために…作るわ」
「そうか! 嬉しいな! ありがとう、!」
ますます強く抱きすくめられ、は今にも顔が上気しそうだ。
「やーめーてーよーぅ!!」
嫌がるだったが、紂王は止めない。
額にキスを一つ落とされ、完全に顔を赤くするを見て、紂王は楽しそうに笑みを深めた。
は心に誓う。
決めた。
紂王と出会ってから作ったチョコブラウニーは、紂王のことを想って作っていたことは、ぜっったいに、言わない。







**ツンデレ?ヒロインさん。
現代パラレルで紂王様の一人称に困ったんですけど、雰囲気というか設定優先で「予」にしました。「余」と迷ったんですが「予」の方が好きです。
…それより何より、短すぎる(苦笑)。
*2015/01/27write
*2015/02/10 up

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